ナガオの歩みと未来
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創業前
日本の繊維産業は、明治維新直後の明治新政府が、欧州から繊維技術を導入したところから始まります。人造絹糸が日本に初めて紹介されたのは、明治35年(1902)頃であり、帝国人造絹糸を始め、鐘淵紡績・東洋紡績・大日本紡績などの大手紡績会社が次々と繊維産業に乗り出しました。これに伴い、原料である二硫化炭素の需要が増大しました。
創業者の長尾昇次郎は若くして香港に渡り雑貨商を営んだ後、岡山で衆議院議員の第一秘書を務める傍ら、木炭販売業を営んでいました。この時の人脈と経験を活かし、二硫化炭素の製造を目的とする中国産業(現(株)クラレ炭素材料事業部)の設立に参画し、経理と原料面の調達を担当しました。
創業
繊維産業が発展するにつれて、人造絹糸製造時に副生物として多量に発生する人絹結晶芒硝の処理が問題になりつつありました。弊社は、倉敷絹織(株)(現(株)クラレ)から副生物として発生する人絹結晶芒硝から中性無水芒硝を製造する事を目的として、昭和6年に設立されました。さらに、製造された無水芒硝と石炭から、人造絹糸の製造に必要な硫化ソーダを生産(ルブラン法)することで、紡績メーカーとの間で循環型社会となる事業を確立しました。
昭和10年には、中国レーヨン(株)(現(株)クラレ岡山事業所)が岡山児島湾沿岸に新設されたことに伴い、弊社の工場を現在の地(岡山市南区宮浦)に建設しました。太平洋戦争
太平洋戦争(1941~1945)中は、戦時統制を敷かれ、人絹・スフ業者33社48工場は、人絹5社7工場、スフ1社14工場に激減しました。
硫化ソーダ工業も同様に、原料の逼迫と製品販路も縮小され、昭和16年には全国で26工場が稼働していましたが,昭和20年には操業工場が僅か9工場に激減しました。こうした厳しい状況下で、弊社は辛うじて存続して終戦を迎える事ができました。 -
水硫化ソーダの開発
昭和30年代初頭、ヨーロッパでは皮革用途として、硫化ソーダに代わって水硫化ソーダが使用され、その高い品質が業界の関心を集めていました。しかし、当時の日本における水硫化ソーダは、非常に高値であり、安価な水硫化ソーダが熱望されていました。
また、同時期は戦後の復興著しい中、石油精製過程で発生するソーダ分(主成分:Na2SとNaOHを各5~8% 含む液体)の処理に苦慮していました。
弊社は、この石油精製過程で発生するソーダ分に着目し、同じく石油精製過程で発生するH2Sガスと反応させることで、水硫化ソーダとして回収する技術を世界で初めて確立し、同時にその製造プロセスも確立しました。弊社は本プロセスの特許を世界各国で取得し、現在も各地で採用されています。さらに、公害防止に貢献するとともに資源回収という一石二鳥の画期的な技術として高く評価され、昭和40年社団法人石油学会から技術進歩賞、昭和41年全国発明表彰において朝日新聞社賞を受賞しました。
固形化・高純度水硫化ソーダ設備の導入
液体である水硫化ソーダ・硫化ソーダは、輸送・在庫等の管理が難しく、遠距離ユーザーへの供給が難しい状況にありました。そこで、遠距離ユーザーの要望に応えるため、フレーカーによる固形化技術を確立し、昭和47年に設備を導入しました。
その後、水硫化ソーダ・硫化ソーダの新規用途は拡大をたどり、次第に高品質品が必要になりつつありました。そこで、苛性ソーダに精製した硫化水素を反応させる合成法による、高純度の水硫化ソーダの製法を検討し、昭和63年に四日市コンビナート内にプラントを建設しました。その後も高品質品の需要は増え続け、平成20年には鹿島コンビナート内にも同様のプラントを増設しました。 -
商事部、物流基地の新設
水硫化・硫化ソーダ事業で培った営業ルートを生かし、昭和42年には商事部門を新設し、化学品の仕入販売品の取扱を始めました。その後、化学品用のタンク、タンカー用桟橋を設け、タンカーで運んできた大量の化学品を岡山の地でストックして近隣県に販売するという物流業務を始めました。さらに、顧客の要望に応える形で過酸化水素小分け設備、苛性ソーダ希釈設備などを増設し、事業の幅を拡大させています。
商事部は商品物流事業部と名称を変更し、現在に至っています。新規品の開発
長年培った水硫化・硫化ソーダの技術を生かして、数々の新規品の開発を行っています。
四硫化(多硫化)ソーダ
シアン化物イオン含有廃水の処理を主用途として製造販売を行っております。今では、用途も拡大しており、有機合成などにも使用されております。
廃水処理剤
廃水処理の諸問題に対応するため、重金属捕集剤「NHシリーズ」を製造販売しております。重金属捕集効果が高く、さらにほとんどの場合、発生するスラッジ量が少なくなる利点がございます。
菌製剤
鑑賞魚用の水質浄化を目的として、弊社にて脱硝剤、脱窒剤を培養しています。『おさかな燦々』という商品名で販売しております。
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ナガオのこれから
・総合イオウ化学メーカーとして
自動車・樹脂・携帯電話・タブレットなど、石油化学を基盤とした科学技術の発展には著しいものがあります。
そして、今後も科学技術は発展していき、その中にはイオウ元素を必要とする化合物も多々開発されることでしょう。
私たちは水硫化・硫化ソーダのトップメーカーとして培った技術を生かし、今後のイオウ化学発展のために新たな付加価値を生み続けます。・岡山を拠点とした化学商社
岡山県は、中国四国の交通の要として、発展してきました。
弊社は桟橋と倉庫・タンクを保有しているため、大量の化学品を船で輸送し、岡山からコンテナ・ローリーで陸路配送を行うことができます。
この地の利を生かして、地元に根付いた化学品商社として、事業の拡大を目指します。・環境を考える企業
弊社の創業は昭和6年、紡績メーカーから排出される副生物を再利用し、環境問題を克服することから始まりました。
環境問題に着目し、環境保護に貢献するという創業当時の精神は、現在も脈々と受け継がれています。
私たちは、これからも環境を配慮した事業を模索し続けます